順天堂大学献体28年−白梅会と学生との交流
順天堂大学 順天堂大学に献体団体である白梅会ができたのは今から28年前の昭和43年である。初会式の出席者18名によって始まった白梅会は、よき指導者とよき会員に恵まれ、現在(1996年3月)では会員番号1783番、現存会員850人、献体者585名にまでになった。順天堂大学の解剖実習で1年間で使用される解剖体は、25〜30体であり、これらの遺体はここ10数年ほぼ100パーセント白梅会の会員の献体によっている。このように白梅会の存在無くしては解剖実習は成り立たない状況である。ここでは白梅会の活動、そして学生がどのようにその活動に関わっているかについてふれてみよう。白梅会の活動は、会の創設期には、年2回の総会、解剖教室員も含めての会員の旅行、会報である「白梅会」の年3回の発行、その他地区の懇談会など多彩な活動がなされていた。しかし、会員が増加すると共にこれらの活動を円滑に行う事が困難になってき、現在では年2回の会報「白梅会」の発行と、年1回の総会が主な活動となっている。 白梅会総会は例年5月中旬の土曜日、大学内にある有山講堂で、白梅会、大学、学生が参加し、学長、学部長出席のもとに行われ、大学の主な年間行事の一つにもなっている。総会には200人ほどの会員が集まり、昼食をみんなで食べ、1日を楽しく過ごすよう企画されている。この日の主役は白梅会で、会の運営、司会、開会の辞、閉会の辞をとりしきり、大学、学生はわき役である。学生はわき役と言っても、彼らの役割は大きく、影の主役と言っても言い過ぎではない。その彼らの活躍ぶりについてふれてみる。 総会に参加するのは、その年に解剖実習をしている学生と音楽部の部員である。学生は全員の出席が求められているのではなく、自主的な参加が呼びかけられていて、クラスの70〜60%の参加がある。解剖実習は例年1月から始まるので総会のある5月には解剖にも慣れ、余裕が出来始める頃である。我々解剖学教室員の呼びかけ、先輩からのクチコミ、また学生自身が解剖している遺体を自分の意志で提供しようとしている人々の集まり「白梅会」への興味などが重なり、自主的に集まってくれている。学生の役割は、道案内係、受付係、会場係、テーブル係などがある。テーブル係は会場に並んだテーブルに2人ずつ組になり割り当てられ、そのテーブルに10人前後の会員が座る事になる。テーブル係はその日は1日中そのテーブルの会員と食事をしたり、話をしたり、歌ったりする事になる。テーブル係以外の係りの学生も、昼前には分担の仕事が終わるので、会場に入り、会員と食事をし、話をする事ができる。学生は何を話したらいいのかと色々心配するが、会員が積極的に話しかけ、話が弾んでいる。学生と話ができることが会員の総会に来る楽しみの一つでもある。学生は会員と直に接することにより、いままで「献体」に対して持っていた暗いイメージを一新し、我々と同じ、むしろ、明るい、尊敬すべき人々の集まりとして白梅会を見てくれる事になる。音楽部の学生の活躍も大きい。会が始まる前と昼食時、会場でしっとりした室内音楽を演奏し、会の雰囲気を盛り上げてくれる。昼食後は会員と一緒になつかしい童謡を歌ってくれる。この日は会員と学生がお互いの存在を確かめあう1日となる。 (本間敏彦 記)
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